私はGoogle検索が大好きです。

天文学も、サブカルチャー史も、世界史も、ググれば楽しい情報をざくざく掘り出せます。ただし、そのためには工夫が必要ですが。

 Google検索は召喚術で、あなたの詠唱能力が試されている

偉大なグーグルウィザードは、Googleという名の巨大な魔法の杖に絶妙のワードを入力し、森羅万象を明らかにする。

ネットの奥底に眠る鉱脈を掘り当て、ときには女子中学生の精霊を眼前にかき集めてみせる。一方、駆け出しのグーグルユーザーは、ぎこちなくワードを唱え、wikipediaやyahoo知恵袋を呼び出すのが精いっぱい……。 

この2013年のブログ記事を要約すると、「Google検索で良い知識を手に入れるには、検索ワードを工夫する必要がある」というものです。

“Google検索は、ありきたりの検索ワードしか入力しない人には、ありきたりの知識しか見せてくれない。だから、興味深い知識をゲットしたいなら、検索ワードを工夫しましょう”、という考えは4年前には妥当だったと思っています。

 

でも、2017年のGoogle検索は、当時以上に難しい状況になっているように思われます。 

このツイートが「ググったらカス」と表現しているように、現在のGoogle検索は、ありきたりの知識をみせてくれるどころか、誤った情報に辿り着く可能性の高いものになってしまっています。

 

2017年現在、検索上位の少なからぬ部分は、商業化したまとめサイトやアフィリエイトブログに占拠されています。

あまり深く考えずに検索ワードを入力している限り、だいたい同じような検索結果が上位に並びます。言うまでもなく、それらのまとめサイトやアフィリエイトブログの信頼性は定かではありません。

ジャンルによっては『Yahoo!知恵袋』や『2ちゃんねる』で調べたほうが、ずっと信頼できる情報が得られることもあります。

 

昨年は、DeNAのキュレーションサイト「WERQ」の炎上問題や、アメリカ大統領選挙のデマサイト問題などが話題になりました。

しかし、それで襟を正したのは一部の企業だけで、多くのまとめサイトやブログにおいてはこの限りではありません。たとえば、こちらの記事で議論されているように、あれから半年が経った現時点でも、google検索で信頼できる医療情報を探し出すのは難しいのが現状です。

WELQ退場から半年。事件は医療・健康系検索結果をどう変えたか?

この記事では実際のデータを元に、健康・医療関連の検索結果の半年の動きを見てまいりました。
結果、いくつかのサイトが撤退したものの全体としては大きくは変わってない事、微妙なサイトが順位を伸ばし続けてきていることがわかります。
半年前に問題視された誤った医療情報が上位表示される事について、問題は残っているのです。

このことは、わたしは非常に残念に感じます。

 もちろんGoogleも手をこまねいているわけではなく、「価値のある記事」「価値のあるサイト」が上位に来るよう努力はしています。

しかし、Googleの努力を上回るスピードで膨大な記事がアップロードされ続けているため、Google検索は、玉石混交の情報の大河から砂金を拾うような、難しい作業になりつつあります。

 

 知識とリテラシーがないと、Google検索は難しい

 では、そんな状況下で信頼できる情報をピックアップするためには何が必要でしょうか?

必要となるのは「事前知識」と「高いリテラシー(literacy, 読み書き能力)」と思われます。

 

たとえば「うつ病 認知行動療法」と検索する人と「うつ病 認知行動療法 セッション」と三単語で検索する人では、検索結果に並ぶ情報には、かなりの違いがあります。

つまり、「うつ病の認知行動療法は、セッション単位で進めていく」ということを事前に知っている人と知らない人では、Google検索で見える世界が違うわけです。

 

このことは医療に限った話ではなく、世界史についての調べ物をする時や、旅行先の現地情報を集める時にも当てはまります。

事前知識に基づいて検索ができる人と、そうでない人では、検索をとおして得られる情報の質、みえるインターネットの景色がまったく異なるのです。

 

もちろん、検索結果を絞り込むためのキーとなる単語を目ざとく発見できる人もなかにはいるでしょう。そういう人は、検索ワードにその単語を入れ直すことで、不案内なジャンルでも高品質な情報を手に入れられる可能性があるかもしれません。

ですが、そういった目ざとい勘を働かせられるのは、もともと文章を読むのに慣れた、相当にリテラシーの高い人だけです。

 

現状のGoogle検索の正体は、「知識の無い人に知識を授ける」ツールではなく、

「知識の豊かな人だけが知識を引き出せて」「知識の乏しい人には質の良くない知識しか与えない」ツールと言っても過言ではありません。

あるいは、知識の豊かな者と乏しい者、リテラシーの豊かな者と乏しい者の格差を拡大再生産するツールになってしまっている、とも言い換えられるかもしれません。

 

のみならず、インターネットにはジャンクな情報やフェイクな情報も溢れ、Google検索そのものにも広告がたくさん貼り付けられていますから、それらに釣られて、誤った判断を下してしまうリスクも少なくありません。

情報の真偽や信ぴょう性に注意を払い慣れていない人は、とりわけ危ないでしょう。

 

こうしたことは、Google検索に限った話ではなく、他の検索サービスについても、インターネット全体にも当てはまります。

この、知識と情報を巡る格差の“負け組”になりたくなければ、知識やリテラシーを事前に身に付けるしかありません。そういった土台の部分まではGoogleやインターネットは面倒をみてくれないので、書籍を読むなり、新聞などを読むなりして補っていくしかないでしょう。

「知識を手に入れるための知識」に自信が無い人は、いっそ情報源をGoogleやインターネットに頼らず、図書館や書店に通ったり、新聞やテレビといったマスメディアに頼ったりしたほうが良いのかもしれません。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

 

【プロフィール】

著者:熊代亨

精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。

通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)『認められたい』(ヴィレッジブックス)など。

twitter:@twit_shirokuma   ブログ:『シロクマの屑籠』

熊代亨のアイコン 3

 

(Photo:Trevor Devine)