3421325478_af5ed8b942_z仕事柄、私はマニュアルを作成することが非常に多かった。顧客のマニュアルから、自社のマニュアルまで、数々の業務について幅広くマニュアルを作った。

その中でも比較的どの会社でも作られているのが「報告ルール」である。報告は重要な仕事の一つであるため、殆どの会社は自発的な報告だけに任せず、何かしらの報告ルールを持つ。

 

だが、報告ルールを作るのは意外に難しい。思っていた粒度で上がってこなかったり、知りたいとことが報告されなかったりするケースが多く、ルール作りで苦労している会社が多いようだ。

 

 

例として、あるプロジェクトを想定する。これからチームの進捗報告ルールを作ると仮定しよう。

この中で「自分の作業の状況を、毎週報告する」というルールをレベル別に表すと以下のようになる。

 

 

レベル1.

自分の作業の状況を、毎週報告せよ

恐らく最初の1カ月から3カ月しか守られない。守られたとして報告の粒度はバラバラで、質が低いことが多い。ただしメンバーが全員優秀である場合は、これでも十分回る。

 

レベル2.

遅れを発見し、それに対する対策を早めに取るため、自分の作業の状況を、毎週報告せよ

ルールの目的を伝えることで、報告の質はレベル1.よりも上がる。ただし、粒度は各人でそれほど変化がない。

 

レベル3.

自分の作業の状況を、遅れを発見するために以下の項目に従って毎週報告せよ。

・項目1 進捗状況

・項目2 想定されるリスク

・項目3 リスクへの対策

・項目4 リーダーへの依頼事項

・項目5 備考

項目を指定し、場合によっては報告のフォーマットを指定することで、格段に報告の質が向上する。この辺りから「しっかりとしたルール感」が出る。ちょっとしたプロジェクトでも、この辺りまでは決めているだろう。

 

レベル4.

自分の作業の状況を、遅れを発見するために「この項目、および基準に従って」毎週報告せよ。

・項目1 進捗状況 (進捗の計測基準は以下のように行う…)

・項目2 想定されるリスク (リスクの定義は以下のとおり…)

・項目3 リスクへの対策 (対策には以下の条件を含めること…)

・項目4 リーダーへの依頼事項 (依頼事項は以下の条件をみたすこと…)

・項目5. 備考

項目だけではなく、項目の定義と基準を明確に定めることで、報告の質を相当程度まで上げることができる。基準を定めることで、報告を受けるリーダーや上司も、的確な判断がやりやすくなる。

 

レベル5.

レベル4.までの内容に追加して、「このような報告はしてはいけない」という事例を基準に盛り込む

・進捗の計測は、「現在までに終わっている作業」に限定し、「今手を付けている作業」は含めない。

・想定されるリスクに、対策済みのリスクは挙げない。

など

いわゆる「悪い例」を挙げることで、報告の精度をさらに高めることができる。「良い例」は事例が少ないが、「悪い例」はルールを導入してしばらく経つと数多く集まってくるので、「悪い例」を盛り込んでいくことは重要な作業である。

 

レベル6.

レベル5.までの内容に追加して、「周知の方法」、「ルールの改定の方法」を定める。

・これらのルールは、チームメンバーがプロジェクトに参加した都度、最初にリーダーから説明がなされる。

・1ヶ月に1回、進捗報告会議の中で報告ルールの改善について議題にする。リーダーの承認をうけ、ルールが改定される。改定されたルールは1週間以内にリーダー、もしくは指名を受けた代理人がメンバーに周知する。

など

いかに優れたルールを作っても、周知をしなければ守られないし、またいずれルールは陳腐化する。したがって、ルールには周知と改定というメタルールを定めなくてはならない。

10名を超えるプロジェクトや、人の入れ替わりが頻繁にあるプロジェクトでは、こう言ったメタルールが必要となってくる。

 

レベル7.

レベル6.までの内容に追加して、「インセンティブ、および罰則」を定める。

・報告の遵守率、および違反率は半期毎の人事評価ミーティングにおいて参考情報となる。

など

重要なルールとして、究極までルールの遵守率を高めるのであれば、インセンティブや罰則を定める必要がある。「何も罰則まで…」という場合もあるが、これらのルールが有るかどうかは、遵守率に大きく影響がある。

ただし、罰則については士気の低下を招く場合があるので、ルールの重要度とのバランスを考慮しなければならない。

 

 

もちろん、あらゆるプロジェクトでレベル7.まで行う必要は全くない。報告の重要性や頻度、メンバーの人数や能力に従って使い分けていただければ幸いである。

 

 

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第4回テーマ 地方創生×教育

2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。

地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。

【日時】 2025年6月25日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/6/16更新)

 

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